2025年06月25日 更新
CYBERDYNE株式会社(本社:茨城県つくば市、代表取締役社長:山海嘉之、以下「当社」)が開発した世界初の装着型サイボーグHAL®が、神経可塑性を誘導し、脊髄損傷(SCI)に起因する複数の機能障害に対して全身的かつ包括的な治療効果を有する唯一のデバイスであることが国際的な医学誌に掲載されたシステマティック・レビュー(※)により明らかになりました。
2025年6月に『Global Spine Journal』に掲載された論文「Actively Controlled Exoskeletons Show Improved Function and Neuroplasticity Compared to Passive Control: A Systematic Review」は、英国最大級の総合教育病院であるセント・ジョージズ病院のDarren Lui氏を責任著者として主導され、2011年から2023年までの12年間に発表された555本の文献から選定された27本の臨床研究(計591名のSCI患者)を用いて、外骨格型ロボットの臨床効果を厳密に解析したものです。
当社の装着型サイボーグHAL®は、患者の脳神経系由来の生体電位信号をリアルタイムで検出し、装着者の意図と連動してHAL®が駆動することによって、身体の固有受容器からの感覚系情報が中枢神経系(脳)に戻っていくループを形成することで、人とHAL®の間で脳神経系の機能改善が促進されるiBF(インタラクティブ・バイオフィードバック)を成立させる独特な原理で機能することを特徴としています。膨大な解析を経て公開されたこのシステマティック・レビュー論文によって、装着型サイボーグHAL®と、9種類の類似形状の他社外骨格型の製品(ロボット制御で動作が繰り返される装置)と比較した結果、当社のHAL®のみが神経可塑性を誘導し全身的な治療効果を示す唯一のデバイスであることが明確になりました。
本論文では、機能的MRI研究の知見を引用し、自発的な運動(active movement)は、受動的運動(passive movement)に比べて中枢神経系に対する神経活動をより強く喚起することが報告されています。また、HAL®の基本原理によって実現される中枢系と末梢系の間で構成される反復的な神経伝達のプロセスが、脳や脊髄における信号の学習と強化を促し、最終的には脊髄損傷部位以下の神経回路の再構築・再活性化、部分的な神経支配の回復へと繋がると考察されています。
このような神経可塑性の誘導機構により、HAL®は歩行機能のみならず、排尿・排便機能、疼痛、QOL(生活の質)といったあらゆる二次的健康指標にも一貫した改善効果を示しました。これは、神経系全体への治療的アプローチとして、HAL®が他に類を見ない治療装置であることを臨床的に裏付けるものです。
当社は、HAL®が脳・神経・筋系の機能を全身的に再建しうる唯一の医療機器であること、ならびにSCIという複雑な疾患に対して包括的な治療アプローチを可能とする「サイバニクス治療」の中核であることを、今後より一層明確に伝えてまいります。当社は、今後も科学的エビデンスに基づく医療の推進とともに、革新的なリハビリテーション手法として、国内外の医療機関と連携し、その普及と発展に貢献してまいります。
※システマティック・レビューとは、特定の課題に対して世界中で発表された複数の研究成果を厳密かつ再現可能な手法で収集・評価・統合し、信頼性の高い知見を導き出す方法です。医療分野においては、臨床や政策決定を支える科学的根拠(エビデンス)の中でも、特に重要な役割を担っています。
参考文献
Chiu KIA, Taylor C, Saha P, Geddes J, Bishop T, Bernard J, Lui D. Actively Controlled Exoskeletons Show Improved Function and Neuroplasticity Compared to Passive Control: A Systematic Review. Global Spine Journal. 2025
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